アカルイツキ

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【鑑賞記録】NODA・MAP 贋作 櫻の森の満開の下

贋作 櫻の森の満開の下を観てきた。
(ちなみにこの芝居は、「にせさく」と読む)

 

桜と言えば、野田秀樹

前回の2000年から17年も経ってるんでしたっけ?とびっくりしたけど、

毎年、桜が咲くとこの芝居を思い出しているから毎年観ているような気になっていたのかもしれない。

以下、ネタバレあります。

野田秀樹の舞台の何が好きって、
あまりにたくさんありすぎて、語るに足ることはないのだけれど、
あえて切り取ってみるならば、
”美しさ”と”刹那さ”
である。


舞台に乗っているものすべてに美しさと刹那さがある。

 

そして、ことばあそびを得意とする、野田秀樹の台本のセリフの美しさよ。
普段あんまり思わないけど、この時ばかりは日本人でよかったよね、と思う。
声に出して読みたい日本語。

 

贋作・桜の森の満開の下

贋作・桜の森の満開の下

 
贋作 桜の森の満開の下/足跡姫: 時代錯誤冬幽霊

贋作 桜の森の満開の下/足跡姫: 時代錯誤冬幽霊

 

 

これ以上ないキャストとスタッフでの上演で、野田秀樹自身が

幸い、それにふさわしいこれ以上ないキャスト・スタッフに恵まれた。

これでいいものができなければ、誰の目からも私だけが、悪い。

というところにまで、今追い込まれているのが、辛い。・・・のが良い。

NODA・MAP公演 introductionより)

と書いている。

この作品は、野田秀樹がまだ30代前半に書いたもので、坂口安吾の生まれ変わりと言って、「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」をごっちゃ混ぜにのひつまぶしにして書いた作品で、それだけでもなんというか、もうお腹いっぱいw

 

この作品を初めて観たのは、日本青年館だった。

もうもう、ラストの夜長姫と耳男のシーンが美しくて切なくて、号泣した。
2001年の時も、耳男のラスト「いやあ、まいった、まいった」がせつなくて、客電ついても立ち上がれなかったことを覚えている。

だけどもう、ここだけは、体の奥底から、湧き上がってくる何ものかを抑えることができないシーンがある。

夜長姫の最期。

「好きなものは 呪うか 殺すか 争うか しなければならないのよ」

今回の深津夜長姫、ここよかったなあ。

今、書いていても泣ける。

狂おしいほどに、好きなものは姫だけ、という耳男が、夜長姫の胸を刺す。

そうするしかなかったから。

それを微笑みながら「いいの」と受け入れて、このセリフを言う。

圧巻のシーンなのである。

もうここだけ観れたら、死んでもいいかと思うくらい。

しかし、隣で観ていた夫は、私が泣いたことに驚いたらしく終演後、
「一体、どこで泣くところがあったの?」と聞いてきた。
これなんの芝居?と不思議に思っていたらしい。
ことほど左様に、人は感じるところが違うのである。

うちとそと、だったものが、上と下になる。

上と下になった途端に、正しいものとそうでないものに分かれる。

鬼とヒト。

ついさっきまでは共存していたのに、”正しい”境目を決めて、”正統な”系譜を作ることで排除されて行く。

メタファにつぐメタファ。

観る人によってどうとでも解釈できる芝居。

野田秀樹の芝居は、舞台の上で成り立つもので、ナマモノだ。
映像で残してあるものもあるけれど、そして、録画もしていて見るんだけれど、
生で観ていなければ得られないもの、が観客側にもある。

 

いま、この瞬間。

 

キャスト、豪華すぎてもったいないくらいでした。

大倉&秋山&藤井の3人の鬼般若なんて、こんな豪華にする必要ある?!っつーくらい。

オオアマの天海祐希さん。宝塚退団以来の男役ということで話題になってましたが、男でも女でもないっていうか、あの気品と皇子である存在感が天海さんだよねっていう。 

マナコの古田さん。17年前もマナコでしたが、今回のマナコは若さが枯れた分、凄みが増したような。 

耳男の妻夫木くん。チャーミングで弱っちいのがとってもいい感じ。夜長姫に振り回されちゃうのも、その優しさ、弱さ、素直さが出ちゃうんだよねって感じで。
あの声の明るさもいいんだよねー。野田さんが気に入ってるんではないかなーと思う。

ただちょっと、せつなさが足りなかったけど。それは私の好み。

深津絵里。私がバケモノ女優の一人に入れていまして。(松たか子深津絵里菅野美穂。その上に、大竹しのぶ
かわいくて、儚げで、図太くて、恐ろしい。見事な夜長姫でした。
声色も毬谷友子の夜長姫(毬谷さんは野田さんが声の七変化ぶりを絶賛する女優)に負けるとも劣らず。

野田さん、60代になっても全然歳とらないですね。このままずっと走り続けて行ってもらいたい。頑張ってついていきますw

 

今日でなくちゃいけないのかい?

今日でなくっちゃいけないんだ。

 

 

櫻の森の満開の下へ行くんだね

ああ、涯のない花の下へ。

 

 

 

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