性暴力救援マニュアル刊行シンポジウムに参加しました
アカルイツキの稲葉麻由美です。
富山県議会議員で産婦人科医の種部恭子先生が「性暴力救援マニュアル」を」出版されました。
その記念シンポジウムか2回にわたって開催され参加しました。
シンポジウムの概要は以下のようなものです。
Part1
性暴力被害の現状 産婦人科医 種部恭子先生
緊急避妊について 産婦人科医 北村邦夫先生
性暴力を受けた女性の心理状態と生活上の影響、フェミニストカウンセラー 井上摩耶子先生 ✕ 周藤由美子先生
法医学の観点から 法医学者、医師 高瀬泉先生
Part2
性暴力被害者への急性期医療のポイント (産婦人科医・河野美江先生)
こどもと性暴力被害の実態 (小児科医・溝口剛史先生)
性暴力被害が疑われる子どもへの事実確認のポイント (心理学者・仲真紀子先生)
学校での性暴力を防ぐために (養護教諭・金子由美子先生)
本書の内容
本書は産婦人科医として30年、女性を診る医療現場に携わってこられた種部恭子先生が企画。産婦人科医、法医学者、感染症医、精神科医、小児科医、看護師、弁護士、カウンセラー、養護教諭など、多職種にわたるエキスパートに性暴力の被害者支援のために必要なことを執筆いただきました。編者の序文に「あったこと」を「なかったこと」にしないとあるように、司法判断を導くための材料を見落とすことなく保全するために、そして何より性暴力被害を受けた方々の心身の健康を取り戻すために、医療に何ができるか、渾身の思いを込め、1冊にまとめられました。
性暴力やドメスティック・バイオレンス(DV)は、ジェンダーに基づく暴力行為であり、人権侵害かつ重大な公衆衛生問題です。
性暴力を「なかったこと」にしないために、とこの本の冒頭に書かれています。
この国ではまだまだ、性暴力はなかったことにされています。
私は公認心理師や臨床心理士の資格は持っていないので、クリニックや病院で働くことはできません。(クリニックや病院で働く時に大抵資格を求められるので)
ただ、性暴力被害者支援をするための学びは継続的に受けています。
普段、医療従事者や法曹界の方と直接お話する機会はあまり多くありません。セミナーなどでお会いした時にお話するくらいです。
このシンポジウムは、普段はほとんどをお会いすることのない医療現場で働いている現場の医師の方の実際の声が聞けて、貴重な機会でした。
特にパート2は子どもへの性暴力被害の支援に取り組んでいらっしゃる先生方ばかりだったので大変勉強になりました。
小児科医の溝口先生のお話は特に興味深く victiimologyを専門とする医療者がほとんどおらず”変わり者”扱いされている。客観的な医学評価を持って論じていても、虐待や性暴力に関することは「運動」扱いされる。
そんな中先生方が変わり者扱いされても諦めることなくずっと活動されてきたそのことか今日に繋がっているという話がありました。
特に「性虐待を受けた子どもは、最も傷つき、最も不適切な侵害を受けた子どもであり、最も配慮されなければいけない子どもである。
それにも関わらず今の日本では十分な配慮がされているという現状にない」とお話されていて、本当にこれは、とても重い責任だと思います。
また、虐待の治療は非常に難しく、予防こそ本当に重要だと気づかれたという先生自身のお話がありました。
これはまさにそのとおりで、被害後に、さらに2次被害を受けて、その後、何十年も経ってから治療に取り組もうとしてもなかなか回復が難しいという現状があります。
初期の治療が非常に大切ですし、そのためには予防活動もとても重要だと思います。
また仲真紀子先生の「子どもを傷つける聞き方」についてのお話は、子どもだけでなく誰に対してもそうではあるけれど、被害を受けた子どもに対してより注意深く、配慮していくということが本当に大切だと思いました。
自分で出来ない時には無理に聞こうとせずただそばに寄り添い、ワンストップセンターなどの専門的なところで話を聞いてもらうということが適切な場合もあります。
子どもに話を聞くときには、子どもにコントロール権を渡す。
「教えて」という姿勢がとっても大切とおっしゃっていました。
パート1の北村邦夫先生は、緊急避妊薬が諸外国では10代の若者にはほとんど無料で配布されるという話に、日本でそれをやったらどのくらいの予算が必要なのか計算したそうです。
先生の計算によると約150億でそれを実現することができます。
戦闘機のオスプレイが1台3600億。そのことを考えたら、どこに国の予算を使うのか、私たちはよく考えなくてはいけないですね。。。。
妊娠は女性の体にしか起こらない、人工中絶は、リプロダクティブ・ライツである。
日本では No means No が定着していない。
性交同意年齢は13歳となっているにも関わらず、性教育がまっとうに行われていないということなどをお話しされました。
また同意について、0歳から学べるとおっしゃっていたのが印象的でした。
例えば、家で料理が美味しくないと言われた時に、「そんなこと言うもんじゃないよ」と教えていたら、「嫌だ」と言ってはいけないと教えてるのと一緒だと。
普段、そのように教えているのに、性的なことだけ別に教育することはできないのではないか?とおっしゃっていました。
日常の中から同意について教えていなければ、身に付いていくものではないのかもしれません。
とにかく盛りだくさんの内容で学びが非常に大きかったです。
医療にできることや、アカデミアにできることがまだまだたくさんありそうです。
これからの先生方のご活躍にも期待しながら、自分でできることも考えていきたいと思います。